話題のサーモウッド(ローステッドメイプル)徹底比較検証
- yuuukey1003
- 2021年2月17日
- 読了時間: 8分
こんにちは、YKです。
ローステッドメイプルという単語を最近よく耳にすることがあります。
こういうちょっとこんがりした色のネックですね。
サウンド、レビューはこちらからどうぞ
Geek in Boxさんで取り扱っているようです。
最近はFenderからオフィシャルにネックだけ売られるようになりましたね!よい時代です。
ご存じない方もいらっしゃると思いますので簡単に解説しておくと、ギターやベースに使われるボディやネックの木材を無酸素状態の中180℃~240℃程の高熱で加熱処理を施した素材の事を指します。
酸素がない状態であるため、木材が燃えてしまうことは無いようです。あくまで加熱ですね。
燃やしているわけではない様です。
無酸素状態を作り出して加熱するわけですから当然それなりの設備が必要になってきます。
ここら辺は企業秘密らしくなかなか情報がありません。まぁ情報あったところで自分で真似しようとは思いませんが...
で、なんでわざわざそんな設備整えてコストかけてまでネックやボディに熱処理を施しているのかというと、そこにはちゃんと理由があります。

わざわざコストと手間をかけて作るわけですからそれに見合う、もしくはそれ以上のメリットがあります。それは
1.強度が増す
2.オープンなビンテージの様な鳴りが得られる
3.軽くなる
順番に見ていきましょう。
1つ目の強度に関してですが、高温の加熱処理により木材にもともと含まれている水分が蒸発していきます。そのため余分な水分が抜けて強度が増します。さらに木材の樹脂が熱により結晶化するようです。これも強度に一役買っています。
ベースにせよギターにせよネックには弦が張られておりその張力で曲がってくることはよくある話です。特に太いベース弦の張力はギターよりもはるかに強く、しかも長さも長い。
ネックにかかる負担は非常に強いわけですね。
弦に引っ張られて徐々に曲がってきたり、ねじれてきたり様々なトラブルに見舞われることがあります。
そうなればピッチが合わないとか弦高が上がってしまい弾きにくくなるとかだいぶ厄介です。
中にはグラファイトで補強されたネックもありますがなかなか少ないです。それにそういった楽器の類は作りがモダンであることも多く「グラファイトで補強されているから」という理由だけでその楽器を選ぶことはできません。
もちろんその音や見た目、弾きやすさが自分好みであればそれに越したことはありませんし良いと思います。
話がそれましたが、詰まるところベーシストの皆様はこの「ネックの反り」に常に悩まされるわけですね。
この最大の弱点を克服できるわけですからかなりのメリットと思われます。
とは言っても完全に反らないわけではありません。さすがに木ですから弦を張れば若干は曲がります。が、圧倒的に安定している感じです。ほとんど動かないです。
木材は呼吸していると言われており、季節によって多少反ったり戻ったりします。
しかし一度水分が飛び、木材の樹脂が結晶化した状態の木はなかなか動きにくいです。
実際ぼくも数年使ってますが全然トラスロッドは調整しておりません。
つづいて2つ目のメリット
ビンテージライクなサウンドに代わる。
これは賛否ありそうですが、そういわれる理由も納得です。
材がカラッカラに乾いているので非常にオープンになってくれる印象です。
ビンテージと聞いて思い浮かべるあの「渋いイナタイ音」というのは劣化したピックアップなんかも音に影響してきますので一概にネックだけでそこまでは近づきませんが、タッチを非常に繊細にとらえてくれる特徴があります。
そしてよく鳴る。
ここで言う鳴るというのは「よく振動する」という感じでしょうか。
イメージとしてはキャンプに行ったとき、雨で湿気た薪とカラカラに乾いた薪、叩いたときに「カーン」と音が響くのは当然乾いた方の薪ですよね。そんなイメージです。
濡れ煎餅食べた時より普通の煎餅かじったときは「バリッ」っていい音出ますよね。あんな感じです。
当然水分を含んでいない材の方がオープンな音になります。
ここで言うオープンとは、たとえば口を大きく開けてハキハキとしゃべったり歌ったりしている声のトーンを想像してください。
反対にオープンななりではない状態はクローズドな鳴りなんて表現はしませんが、
口を閉じて歌っている様な感じです。やや極端ですが。
「んーーんーー」と口を閉じて歌っても輪郭が聞き取りにくいのと同じですね。
ここら辺は周波数的な部分もあります。当然。
私たち人間の耳に一番よく聞こえる周波数がざっくりといえばEQでいう所のミドルです。
ここの帯域が出ているとよく聞こえるんです。
演奏するのもその音を聞くのも我々人間なわけで、このミドルの出方で音の印象は大きく変わってきます。
ローステッドメイプルは乾いていて良く響くのでそのあたりの音がグッと持ち上がって聞こえます。
ただ、反対に「よく振動する」という事は弦の振動の妨げに成り得ます。
弦の振動と同じようにボディやネックが振動すると、弦の振動を吸収してしまうわけですね。
弦の振動が共鳴によって分散されるのはなんとなく創造がつくかと思います。
たとえば逆に大理石でできたベースに弦を張って弾いたらその質量と硬さが手伝って弦のサスティンは木材より遥かに長くなると思います。
ちょっと力学的な話になってしまうので割愛しますが。。。
ただ、だからと言って「ややサスティンがなくなる」というのがはたしてデメリットかと言うとYKはそう思いません。
理由としては
1.聴覚上そこまでサスティンが減ったように感じない
2.そもそもベースにそんなにサスティンなんて要らない
この2点です。
まず弾いていてサスティンが短くなったという印象が全くありません。
いたって普通です。
それとサスティン必要なのか説。
よく、弦のメーカーの謳い文句に「豊かなサスティン」とか書いてあったりしますね。
決して間違ってると思いませんし、その方がデッドでなくハリのある音がしますから良いんです。
ただ、ギターなら音を伸ばすロングトーンはあるかもしれませんが、ベース演奏していて「ぶーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーん」ってずっと伸ばして弾くか...
という事ですね。
場合によってはあるのかも知れませんが。。。僕はほとんどないと思ってます。
Paul Mccartney もJames JemersonもJaco Pastoriusもみんなサスティン短いですね。
ここら辺音楽ジャンルの好みも出てくる部分なので難しい話題ですが。
もともとベースはコントラバスから来ていて、コントラバスの弦を指で弾いた時なんかは「ボン!」とか「ガコン!」だけです。実際モワーっとあたたかなサスティンは続きますが、アンサンブル上はほとんどアタックのみに近いかもしれませんね。
あ、また話がそれました。
要約するにサーモウッドでよく振動するからと言ってサスティンの減少はデメリットに成り得難いという事です。
続いて3つ目のメリット。軽い。
これはありがたいです。重い楽器はセッションしてて疲れますからね!軽いのは助かります。
ストラップつけて立って弾いている時に手を離すとヘッドが勝手に下がっていく事がベースではよくありますが、この「ヘッド落ち」が非常にしにくくなります。
ボディバランスが良くなって弾きやすくなりますね。

いいこと尽くしなローステッドメイプルです。
あえてデメリットを伝えるなら「割れやすい」ことですね。
いやいや!割れやすいなら要らないよ!って思うかもしれませんが普通に使ってていきなりパカッて割れちゃうことなんてありません。
僕はWarmothでオーダーしたネックを使用していますが、アメリカから届いたときに一緒いに説明書や注意書きが同封されていたんですね。
ペグやテンションピンは自分で取り付けるので、そもそものネジ穴が開いていないものだったので。
その穴あけの際に注意しないと木目に沿って材が割れることが稀にあるよという注意書きでした。
一般的にハンドドリルだと回転が遅いので割れるリスクが高まります。(ピックガードやポリ塗装幕も含め)電動の高回転なドリルであれば慎重に行えば問題ないとのこと。
まあ持ってなかったので手でやりましたけどね^^
案外大丈夫でした。
なのでここに関しては直接演奏やサウンドには関係ないデメリットになりますので、あまり気にされなくてもよいのかなと思います。
オーダー物の場合は音がどう化けるかは完成してみないとわからないのである意味「音が普通と違う」という事それ自体がデメリットに成り得ますが、最近BacchusやFenderからもサーモウッドを搭載した楽器が販売され始めています。
完成品であれば弾いてみて好きな音であれば買いですし、好みでなければそれはそれ。
あまりデメリットはないかなと思います。

長くなりましたが上記まとめるとローステッドメイプルネックは
水分が抜けていて反りや環境の変化に強く、オープンな鳴り、豊かなミッドが期待できるネックです。
僕のはオーダーで送料も含めたら$350くらいかかりましたが、最近では冒頭に貼ったリンクにあるようにリーズナブルなモデルもたくさん出てきています。
僕が買ったネックだけの金額で本体一式買えてしまうという...!
素敵ですね。
ローステッドメイプルネックはこれからも様々なメーカーが採用していくのではないかなと考えています。サウンドの比較や当ブログが皆様のお役に立てれば幸いです。
最後までお付き合い頂きありがとうございました。
YK
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